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退職金制度はいつから導入するべき?検討事項や作り方を解説
企業にとって、従業員の長期的な働きやすさや定着率の向上を図るために、退職金制度の導入は重要な施策の一つです。
しかし、どのタイミングで導入すればよいのか、どのような制度が適しているのか迷う企業も多いでしょう。
本記事では、退職金制度の基本的な仕組みや導入のタイミング、種類、作成方法について詳しく解説します。

目次
退職金制度とは?
退職金制度とは、従業員が退職した際に企業から支給される金銭のことを指します。
これは、長年の勤務に対する報酬や、退職後の生活を支援する目的で支払われるものです。
退職金は、企業の規模や業種によって制度の有無や内容が異なります。
一般的に、退職金の支給方法には以下のような形態があります。
- 一時金方式:退職時に一括で支払われる方法。
- 年金方式:退職後に一定期間、年金として分割支給される方法。
- 併用方式:一時金と年金の両方を組み合わせた方法。
企業は、これらの方式を踏まえたうえで、どのような形で退職金を支給するかを決定する必要があります。
退職金制度が始まった背景
日本における退職金制度の歴史は、明治時代にまで遡ります。
当初は軍人や官僚向けに導入されましたが、次第に民間企業にも広がっていきました。
特に高度経済成長期において、企業は従業員の長期雇用を促進するための施策として退職金制度を充実させました。
当時は「終身雇用」と「年功序列」が一般的だったため、長く働けば働くほど退職金の額が増える仕組みが主流でした。
近年では、雇用の流動化や人材の多様化が進み、退職金制度のあり方も変化しています。
企業ごとに適した制度設計が求められる時代となっているのです。
企業は退職金制度をいつから導入するべき?
企業が退職金制度を導入する最適なタイミングは、以下の要素を考慮する必要があります。
- 企業の成長フェーズ:創業初期はキャッシュフローが安定しないため、一定の収益が確保された段階で導入するのが一般的です。
- 従業員の定着率向上を目指す場合:退職金制度があることで、従業員が長く働くインセンティブとなり、離職率の低下が期待できます。
- 業界の慣習:競合他社が退職金制度を導入している場合、優秀な人材を確保するために導入を検討する必要があります。
企業の状況に応じて、適切なタイミングで退職金制度を整備することが重要です。
退職金制度の種類
退職金制度の種類には、企業が従業員の退職後に支給するためのさまざまな仕組みが存在しており、それぞれに特徴的なメリットとデメリットがあります。
これらの制度は、従業員の生活を支えるための重要な財源となると同時に、企業の財務管理や負担にも影響を与える要素となります。
以下に代表的な退職金制度を紹介し、その詳細を説明していきます。
確定給付企業年金
確定給付企業年金は、企業が従業員の退職後に支給する年金額を事前に確定し、その金額を定期的に支給する制度です。
この制度の最大の特徴は、従業員が退職時に受け取る金額があらかじめ決まっていることです。
企業はそのための掛金を拠出し、年金運用を行うことになりますが、年金額が確定しているため、企業が運用成績に関係なく支給額を保障しなければならないというリスクを負います。
これにより、企業の財務に負担がかかる可能性があるものの、従業員にとっては退職後の生活資金が安定的に確保できるという大きなメリットがあります。
ただし、企業側には長期的な資金管理や運用におけるリスクが存在するため、安定した運営には慎重な財務計画が必要です。
加えて、退職金として支給される金額が事前に決まっているため、インフレなどの経済的変動に対するリスクが存在する点も注意が必要です。
確定拠出年金(401K)
確定拠出年金は、企業または従業員が一定額を掛金として拠出し、その後、その掛金を運用することで得られるリターンによって退職金額が決まる制度です。
この制度では、企業が一定の負担をし、従業員が運用の方法を選ぶことができるという特徴があります。
運用の成果によって将来受け取る金額が変動するため、従業員には運用リスクが伴います。
運用方法を従業員自身が選べるため、金融知識や投資に対する理解が求められます。
企業側にとっては、運用のリスクを従業員に転嫁することができるため、一定の負担で済むというメリットがありますが、従業員にとっては運用がうまくいかない場合に退職金額が予想より少なくなるリスクがある点がデメリットと言えるでしょう。
そのため、従業員が運用方法を適切に選び、自己管理できるよう、継続的なサポート体制を整える必要があります。
中小企業退職金共済制度
中小企業退職金共済制度は、主に中小企業を対象とした公的な退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しています。
この制度では、企業が掛金を拠出し、従業員が退職時にその掛金に応じた退職金を受け取ることができます。
特徴的なのは、企業の負担を軽減するために、国からの助成がある点です。
これにより、中小企業は比較的低い負担で退職金制度を整えることができ、従業員には安定した退職金が支給されることになります。
企業にとっては、負担が軽減されると同時に、従業員に対して福利厚生として魅力的な待遇を提供することができるため、従業員のモチベーション向上にもつながる制度と言えるでしょう。
ただし、この制度を利用するためには、一定の条件を満たす必要があり、手続きや管理に関する事務的な負担が発生することもあります。
前払退職金
前払退職金制度は、退職金を一括で支給するのではなく、給与に上乗せする形で前払いする制度です。
これは、従業員が退職時にまとまった金額を一度に受け取るのではなく、定期的に給与として支給されることになります。
この制度のメリットは、従業員にとって毎月一定額の収入が確保されるため、日常的な生活費の安定が図られる点です。
また、退職金の支給額を前倒しで受け取ることができるため、資産運用の自由度が高くなるという利点もあります。
一方で、退職金相当額が前払いされるため、従業員には計画的な貯蓄や資産管理が求められます。
また、退職金としての一時金の支給がなくなるため、退職後に大きな支出が発生する際に、予想外の資金不足に陥るリスクもある点がデメリットとなります。
給与額が一定であるため、将来に向けた老後資金の積み立てが難しくなる場合も考慮しなければなりません。
社内準備退職一時金
社内準備退職一時金制度は、企業が独自に積み立てた資金を退職時に従業員へ一時金として支給する制度です。
この方法は、企業が自主的に退職金の準備を行い、退職時にその資金を従業員に支給するという形です。
企業側には、事前に積立を行う自由度があり、退職金額を企業の判断で決められる点が特徴的です。
しかし、この方法では企業の業績や財務状況に大きく左右されるため、業績が悪化した場合などには、従業員が期待していた退職金を受け取れない可能性もあります。
企業側にとっては、業績に応じて柔軟に積立額を調整できるため、経済的な負担を一度に重くすることなく運営できるメリットがありますが、同時に従業員に対しては、企業の安定性に依存するリスクがあるため、従業員の退職金の支払いに関しては慎重な管理が必要となります。
退職金制度は企業と従業員の双方にとって重要な要素であり、それぞれの制度には特徴があり、適切に選択することが大切です。
企業の規模や方針、経済状況に応じて、最適な退職金制度を選ぶことが、従業員の生活の安定を支えるために不可欠と言えるでしょう。
退職金制度を作る際に検討するべきこと
企業の財務状況
退職金制度を導入する際には、まず企業の財務状況を十分に分析することが不可欠です。
退職金は長期にわたる支出となるため、持続可能な資金計画が求められます。
導入時の初期コストや毎月の積立額だけでなく、将来的な景気変動や業績の変動に対応できるかどうかを慎重に検討する必要があります。
従業員の意向
従業員にとって魅力的な退職金制度であることも重要です。
制度を形だけ整えても、従業員にとってメリットがなければ満足度は向上しません。
退職金に対する従業員の意識や期待を調査し、ニーズに沿った制度設計を行うことで、モチベーションの向上や離職率の低下につなげることができます。
競合他社の動向
競合他社がどのような退職金制度を導入しているかを把握することも大切です。
同業他社と比較して競争力のある退職金制度を整備することで、優秀な人材の確保や従業員の定着につながります。
業界の平均やベンチマークを参考にしながら、企業独自の強みを活かした制度設計を行うことが求められます。
退職金制度の作り方(作る流れ)
退職金制度を企業で導入する際には、明確な目的を持ち、適切な制度設計を行うことが重要です。
制度の選定から運用までの流れを一つひとつ順を追って説明します。
1. 目的を明確にする
退職金制度を作成する第一歩は、制度の目的を明確にすることです。
企業が退職金制度を設ける目的は、従業員の退職後の生活を支えるためだけでなく、従業員のモチベーション向上や企業の社会的責任を果たすためにも重要な役割を果たします。
また、企業の規模や業種、財務状況によって、制度の内容や方針も変わるため、まずはどのような目的で制度を設けるのかを定めることが大切です。
例えば、「従業員の長期的な安定を図り、退職後の生活を支えるため」といった目的であれば、確定給付企業年金のような安定した支給額を提供する制度が向いているかもしれません。
一方で、「企業の負担を軽減し、柔軟な運営をしたい」という目的であれば、確定拠出年金のように、企業の負担を一定に保つ制度を選ぶことが適している場合もあります。
2. 制度の種類を選定する
目的が明確になったら、次にその目的に合った退職金制度の種類を選定します。
退職金制度には、確定給付企業年金、確定拠出年金、中小企業退職金共済制度など、さまざまな種類があります。
それぞれの制度には特徴があり、企業の規模や財務状況に合わせた最適なものを選ぶことが大切です。
例えば、企業規模が小さい場合や財務的に余裕がない場合は、中小企業退職金共済制度や確定拠出年金が適していることが多いです。
これらは企業負担を軽減し、従業員にも安定した退職金が支給される仕組みを提供します。
逆に、大企業や長期的な運営が安定している企業であれば、確定給付企業年金のような安定性のある制度を選ぶことが考えられます。
3. 財務シミュレーションを実施
制度の種類を選定した後は、財務シミュレーションを実施して、企業にとっての負担額や将来の支給額を試算します。
退職金制度は、企業にとって長期的な支出となるため、運用の際には綿密な財務計画が必要です。
特に確定給付型の制度では、企業側の将来的な支出額が事前に予測できるため、その額が企業の予算に合っているかどうかを確認することが不可欠です。
また、退職金制度を運用するにあたり、企業の業績や市場の変動などを踏まえてシミュレーションを行い、長期的に無理なく運営できるように調整を加えることが大切です。
この段階で、必要な掛金額や、退職金支給のシナリオを複数ケースで計算し、リスクを抑えるための対策を検討します。
4. 就業規則に反映する
退職金制度を決定したら、その内容を就業規則に反映させる必要があります。
就業規則は、従業員との契約において重要な役割を果たすため、退職金制度に関する事項も明記しておくことが求められます。
制度内容、支給条件、支給額の計算方法、運用に関する規定など、詳細なルールを就業規則に明記することで、従業員との認識のズレを防ぎます。
就業規則の改定に際しては、従業員代表との協議が求められる場合があります。
また、退職金制度に関する変更は、従業員に対して周知徹底し、納得を得ることが重要です。
透明性を保ち、公平に制度が運用されることが、従業員の信頼を得るための大切なポイントとなります。
5. 従業員への説明・周知
退職金制度が決定し、就業規則に反映された後は、従業員への説明と周知を行います。
退職金は、従業員にとって非常に重要な福利厚生の一環であり、その内容について理解してもらうことが重要です。
説明会を開いたり、個別に問い合わせに対応したりすることで、従業員が制度について納得し、安心できるようにすることが大切です。
また、退職金制度を理解してもらうことで、従業員が将来の退職に向けて計画的に貯蓄や資産運用を考えるよう促すことができます。
制度の詳細な説明を通じて、従業員に制度を最大限に活用してもらうことが、企業の意図した目的を達成するために不可欠です。
6. 運用を開始し、定期的に見直しを行う
退職金制度を開始したら、実際に運用を行い、定期的にその運用状況を見直すことが求められます。
制度開始当初は、予想していた通りに機能するかを観察し、必要に応じて改善点を見つけ出します。
企業の業績や社会状況が変化することを踏まえ、運用計画は柔軟に見直し、調整していくことが重要です。
また、定期的な見直しを通じて、制度の目的が引き続き達成されているかを確認し、必要であれば追加の施策を講じます。
退職金制度は長期的な運営が求められるため、経済や企業の状況に応じた柔軟な対応が求められるのです。
退職金制度を導入することは、企業にとって重要な決断であり、その運用には計画的かつ慎重な取り組みが必要です。
適切な制度設計と運用を通じて、従業員に対する責任を果たすとともに、企業の健全な成長に貢献することができるでしょう。

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いかがでしたでしょうか。
様々な種類のある退職金制度ですが、それぞれのメリット、デメリットをしっかりと理解し、自社にあった形を採用することが重要になります。
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元記事発行日:2025年2月18日、最終更新日:2025年3月19日