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確定拠出年金のデメリットとは?メリットを受けにくいケースは?

確定拠出年金とは?

確定拠出年金は、拠出された掛金とその運用益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。

2001年に、「確定拠出年金法」が制定されました。第一条(目的)には、「この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」と定めています。

掛金額(=拠出額)が決められている(=Defined Contribution)ことから、確定拠出年金(DC)と呼ばれています。

確定拠出年金の特徴として、次の点が挙げられます。

  • 運営管理機関(金融機関等)が選定・提示する運用商品(投資信託、保険商品、預貯金等)の中から、加入者等自身が商品を選んで運用します。

運用の結果に応じて給付額が決定されます。

  • 加入者等は、複数の運用商品を選ぶこともでき、運用の途中で運用商品を

変更することもできます。

  • 老後までの間の運用結果が将来の給付額に影響するため、個々の加入者が

適切な資産運用を行うための情報や知識を有していることが重要です。

そのため、確定拠出年金を実施している事業主は、加入者等に対して必要かつ適切な「投資教育」を行わなければなりません。

  • 年金資産が個人ごとに区分されていて、いつでも残高を確認できます。
  • 退職時に年金資産の持ち運び(ポータビリティ)ができます。
  • 掛金拠出時、運用時及び給付時において税制優遇があります

確定拠出年金には、事業主が掛金を拠出する「企業型(DC)」と、個人で加入して本人が掛金を拠出する「個人型(iDeCo)」の2つのタイプがあります。

企業型(DC)は事業主が主体となり実施される制度で、その事業主が使用する従業員が加入者となります。

掛金は事業主が拠出するほか、規約に定めることで事業主の掛金に上乗せして、加入者が一定の条件で掛金を拠出する「マッチング拠出」を設けることができます。

個人型(iDeCo)は国民年金基金連合会が実施する制度で、原則として20歳以上60歳未満の全ての方(企業型DCの加入者である場合は、加入している企業型DCの規約でiDeCoに加入できる旨が定められていることが必要)が加入できます。

掛金は加入者自らが拠出します。

※確定拠出年金制度の概要(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html

確定拠出年金のメリット

確定拠出年金のメリットは大きく2点あります。 

1.税制優遇制度があります。 

拠出時

企業型(DC)「非課税」となります。

事業主が拠出した掛金:全額損金算入

加入者が拠出した掛金:全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)

個人型(iDeCo)「非課税」となります。

加入者が拠出した掛金:全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)

iDeCo+を利用し事業主が拠出した掛金:全額損金算入

※「iDeCo+」(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)は、企業年金を実施していない中小企業(従業員300人以下に限る)の事業主が、iDeCoに加入している従業員の掛金に上乗せして、掛金を拠出できる制度です。

運用時

企業型(DC)、個人型(iDeCo)共通

運用益:運用中は非課税となります。

積立金:特別法人税課税の対象となります。(現在、課税は停止中)

給付時

企業型(DC)、個人型(iDeCo)共通

年金として受給する場合:公的年金等控除の対象となります。

一時金として受給する場合:退職所得控除の対象となります。

「所得控除」と言われても馴染みがないかもしれませんが、掛金分だけ所得が減るため所得税と住民税が軽減されます。

仮に毎月の掛金が、「2万円の場合(年間24万円の拠出)」、所得税10%、住民税が10%とすると年間4.8万円の税金が軽減される計算です。  

また、「運用益が非課税」に関しても、通常、資産運用をして、証券会社などで、投資信託を運用すると、運用益に対して課せられる税金の税率は、20.315%(所得税・復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)となります。

100万円の収益に対し手元に来る金額は、796,850円になる計算です。

2.自分で運用商品を選択できるため、リスクとリターンを自分でコントロールできます。

セカンドライフ資金を準備する上で、税制の優遇や運用の指図を自ら行えることは大きなメリットになります。

しかし、『金融リテラシー調査 2022年(金融広報中央委員会)』を見てみると、学校で金融教育を受けたことがあると認識している人の割合は、アメリカが20%に対して、日本は7%。

金融知識に自信のある人の割合は、アメリカでは71%と過半数を大幅に上回っているのに対し、日本では、12%とおよそ1割程度で、『自信がある』という声は残念ながら聞こえてきません。

政府は、2003年にスタートした証券税制の優遇措置を広げるため、『貯蓄から投資へ』というスローガンを掲げ、将来のお金に関する課題を自助努力で解決するように促していますがこの20年間ではあまり成果が出ていないようです。

確定拠出年金のデメリットは?

どのようなものにもメリットとデメリットは存在します。もちろん確定拠出年金にも、デメリットは存在します。

インターネットで、散見されるキーワードには、

  • 引き出せない(原則として、60歳まで引き出すことができない。)
  • 元本割れリスク(投資信託での運用では元本割れの恐れがある。)

などがあります。

皆さんはどうお感じですか。日本では、金融リテラシー(最低限身に付けておきたいお金の知識と判断力)に自信がない人が多いものの、世界と比べて突出して低いというわけではありません。

「セカンドライフ資金の準備」という目的を前提に考えるとそれほどネガティブな要素にはならないのではないかと感じている方も多いのではないでしょうか。

60歳まで引き出すことができない

確定拠出年金は、原則として、60歳までは運用資産を引き出せません。

「老後資金2,000万円問題」はご記憶に新しいと感じます。2019年6月に金融庁の金融審議会の報告書が公表され、その中で、老後は年金以外の資産として、2,000万円必要だと騒動になりました。

金融広報中央委員会の調査(2022年)によると、世帯主が60歳代の世帯における金融資産保有額は、平均1,819万円、中央値は約700万円となっています。

また、退職金の平均(大学卒勤続38年の場合)は、大企業で、約2,230万円、中小企業で約1,092万円という結果があります。

「人生100年時代」を乗り切るためには、60歳まで引き出すことのできないお金の貯め方があっても良いかもしれません。

元本割れリスクがある

確定拠出年金の運用対象は、「投資信託」「保険」「定期預金」の3つになります。

投資信託(価格変動型)で運用する場合、株式や債券などに投資をするため、日々価格が上下に変動します。元本保証ではありません。

定期預金や保険は、「元本確保型」となりますが、超低金利下では、資産を増やすことは難しい現状です。

少し視点を変えてみます。

2024年06月の日本の消費者物価指数(総合指標)は、2020年を100とした場合、「108.2」、前年同月比は、2.8%の上昇です。

2020年に、100万円で買えた物は、2024年には、108.2万円出さないと買えません。

この4年の間に、100万円の価値が、実質924,214円になってしまったとも言えます。

例えば、銀行の金利と物価上昇率が、ほぼ同じであれば、元本確保が有効な手段となりますが、物価上昇時(インフレ)もしくは、セカンドライフ資金などの長期的な資金準備では、元本確保より優先しなければいけないポイントがあると言えるでしょう。

手数料がかかる

企業型(DC)の場合は、口座管理手数料などを勤務先の会社が負担することが多い(規約により異なります)ですが、個人型(iDeCo)の場合は、加入者自身が手数料を負担することになります。

手数料には、次の5種類があります。

1.加入時・移換時手数料

2.口座管理(事務・資産管理・運営管理)手数料

3.給付事務手数料

4.還付事務手数料

5.信託報酬

定期的に発生するコストは、「2.口座管理手数料」と「5.信託報酬」となります。

「2.口座管理手数料」は、国民年金基金連合会に支払う「事務手数料」と、信託銀行に支払う「資産管理手数料」は、合計で年間2,052円です。

※運用管理手数料は無料の金融機関が多いため。

「5.信託報酬」は、DC専用ファンドとして低めに設定されている場合も多く、確定拠出年金では、配分変更(毎月の掛金で購入するファンドの種類や掛金の割合を変更すること)や、スイッチング(積立てた資産を売却し、別のファンドを購入すること)が無料なので総じて運用に関するコストを抑えることが可能と言えます。

運営管理機関を選べない

企業型(DC)の場合は、運営管理機関を選べません。会社が指定した運営管理機関が選定・提示する運用商品の中から、加入者等自身が商品を選んで運用します。

個人型(iDeCo)の場合ご自身で運営管理機関(金融機関等)を選択して口座開設を行います。

確定拠出年金は、性質上、ある程度リスクを抑えたファンドで構成することが一般的です。

更なる運用を取り入れるということになれば、「目的」や「期間」を決め、NISA(少額投資非課税制度)や一般の証券口座などを活用するなどの色分けが大切になります。

公的年金額が減少する可能性がある

企業型(DC)では、将来の年金が減額してしまう可能性があります。

企業型(DC)の制度には「選択制DC」と呼ばれる制度があります。

これは、現在の給与の一部を確定拠出年金の掛け金として積み立てるため、所得税・住民税・社会保険料の軽減効果があります。(会社負担分の社会保険料も軽減されるため導入企業が増えています。)

社会保険料が減額する代わりに、厚生年金保険料の積み上がりも減少してしまい、将来の公的年金の受給額も減少します。

税制面でのメリットは個人の環境により異なりますが、会社員は税軽減効果が期待できる方法が限られていますので、検討する価値があります。

転職時等に移管手続きを行う必要がある

現在の環境が変わる時(勤めていた会社を転職や離職する場合など)は、加入していた確定拠出年金制度を変更する必要がある場合があります。

転職の場合、新しい環境に企業型(DC)がある場合は、転職先の制度へ加入手続きが必要になります。

新しい環境に確定拠出年金の制度が無い場合は、個人型(iDeCo)の口座を開設し、資産を移し替える必要があります。

また、離職をして自営業、公務員や専業主婦になる場合も同様です。

加入者資格喪失日(=退職日の翌日)の翌月から6か月以内に移換手続きを行わない場合、年金資産は自動的に現金化され、国民年金基金連合会に移換されてしまいます。※資産は運用されずに、管理手数料が掛かります。

頻繁に行う手続きではありませんし、それほど難しい手続きではないので

あまり気にされる必要は無さそうです。

確定拠出年金のメリットを受けにくいケースとは?

確定拠出年金のメリットは、

  • 税制優遇制度
  • リスクとリターンのコントロール 

ですので、このメリットを活かせる方と活かせない方で、差ができやすくなってしまいます。

1.運用できる年数が少ない

2020年の法改正により、2022年5月から個人型(iDeCo)の加入可能年齢が、原則65歳になるまでになりました。

運用可能年数が少ないと確定拠出年金のメリットを享受できる時間が短くなります。

2.運用できる掛金が少ない

掛金は全額が「所得控除」の対象となり、課税所得を下げることで、支払う税金を少なくできるという仕組みです。

そのため、専業主婦や扶養の範囲内でアルバイト・パートなどで働いている人、住宅ローン控除の適用を受けている人など、収める税金が少ない場合は、確定拠出年金における節税のメリットを受けにくくなります。

3.運用できるスキル・経験が少ない

もし30歳から60歳までの30年間(360ヵ月)で、2,000万円の資産を構築したいとすると、

(非課税の場合)

金利0.1%の場合、毎月54,724円の積立

金利1.0%の場合、毎月47,621円の積立

金利3.0%の場合、毎月34,235円の積立

金利5.0%の場合、毎月23,931円の積立

(課税:20.315%の場合)

金利0.1%の場合、毎月54,891円の積立

金利1.0%の場合、毎月49,045円の積立

金利3.0%の場合、毎月37,130円の積立

金利5.0%の場合、毎月27,060円の積立

時間と制度を有効に活用するためには、金融リテラシーの向上が必須要件になります。

確定拠出年金がおすすめな人の特徴

「住宅」「教育」「セカンドライフ」にかかわる資金を、人生の三大資金と呼びます。

多様化されるライフスタイルの変化から、三大資金に対しての考え方も少し変化してきていますが、「人生100年時代」を乗り切るためには、セカンドライフの対策(老後資金準備)は大切です。

確定拠出年金は、原則60歳までは引き出せないデメリットがある一方、老後の資金準備を目的にするのであれば、メリットが享受できます。

「毎月の拠出が無理なく可能な人」

「目的に合わせた貯蓄が出来る人」

「資産運用に興味や関心を持っている人」

確定拠出年金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

確定拠出年金をおすすめできない人の特徴

新NISA(2024年に改定された小額投資非課税制度)がスタートしたことにより、制度の普及に向けてなのか、まるで定期預金の様に積立てれば自然と成長していくという、「ほったらかし」を勧めるような広告が散見されます。

「分散投資」「長期運用」と「ほったらかし」は話が異なります。

資産運用は「自己責任」となります。ご自身の大切な資産となりますので、少なくとも、「運用の目標」「商品の特徴や運用実績の理解」「定期的な確認・見直し」という流れを意識し、「ほったらかし」はおすすめできません。

また、「投機」と「投資」は異なります。大切な資産を、金庫や銀行にしまって置くことも大切ですが、資産を育てていく、お金に働いてもらう仕組みが必要です。

「投機」と「投資」の違いもご理解ください。

投資とは、中長期的に資産を運用していくことです。

主な利益は、保有資産の売買差益であるキャピタルゲインと、資産を保有することで得られるインカムゲインです。(株式の配当や投資信託の分配金はインカムゲインになります。)

時間を掛け、資産を育てていくことが特徴です。

投機とは、短期的に利益獲得を目指すことを言います。資産の短期的な価格変動を予測し、短期売買によって利益を狙います。資産の価値よりも、短期間の価格変動に着目した取引が投機の特徴です。

資産の活用を取り入れる方と取り入れない方では、良くも悪くも差が出ます。

「知らないからできない」は、もったいないので、まずは「正しく知る」と言う事からスタートしてみてはいかがでしょうか。

確定拠出年金のことならミライブにお任せください、

皆さまは、運用や金融というと苦手意識を持っている方が多いのではないでしょうか。

社会や経済の仕組みは身近な話題であり、伝え方を工夫するだけで、誰でも比較的短い時間で、効果を、実感することが可能です。

ミライブでは、社会人の皆さまのリスキリングの機会として、無料のオープンイベントなどの『学びの場』を提供しています。

この機会に、「はじめの一歩」を踏み出してみてはいかがでしょうか。

また確定拠出年金制度は、導入後も定期的な投資教育を実施しなければならないことになっていますので、『何をやったら良いのか?』『どうやって実施したら良いのか?』と企業担当者の方からのご質問を受けます。

金融教育の潜在ニーズは高く、魅力的な福利厚生制度として他社との差別化

を図ることが可能になります。

※確定拠出年金の投資教育(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/kyouiku.html

ミライブではこれまで、

  • 専門家(ファイナンシャルプランナー)によるライフプランセミナー
  • 企業型確定拠出年金(DC)の導入 および フォローアップ研修
  • 既存研修(新人研修、マネジメント研修など)への金融教育の追加
  • ファミリーデーなどで、お子さま向け金融教育イベントの開催

など、様々な視点から金融教育を実施しています。

セミナーやイベントは参加型で、金融教育を、『楽しく学ぶ場』を創造しています。

従業員の皆さまは、将来の大きな不安ではなく、なんとなく、漠然とした不安を抱えていると感じる方が多いようです。

『不安の種』が育ってしまう前に、『金融教育』という種を育んでいきます。

ミライブの金融教育では、従業員エンゲージメントを高めることを意識し、『目的』・『トレーニング内容』・『実施方法』をカスタマイズして、最適解をご提案いたします。

元記事発行日:2024年8月23日、最終更新日:2024年8月23日