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金融教育が進んでいる国の事例【日本が遅れている理由とは?】

金融教育とは?

金融教育とは、『お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会の在り方について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に判断し行動できる態度を養う教育』と定義されます。

学校教育では「自立する力」と「社会と関わる力」を総合的に培うことを期待されます。

子供たちの成長に願いを込める保護者や教育を受ける子供たちにとって金融教育は非常に魅力的なコンテンツであると言えるのですが、日本の金融教育は先進国の中で遅れていると指摘されています。

『金融リテラシー調査 2022年(金融広報中央委員会)』を見てみると、学校で金融教育を受けたことがあると認識している人の割合は、アメリカが20%に対して、日本は7%。

金融知識に自信のある人の割合は、アメリカでは71%と過半数を大幅に上回っているのに対し、日本では、12%とおよそ1割程度で、『自信がある』という声は残念ながら聞こえてきません。

金融リテラシー(個人が金融に関する知識やスキルを持ち、適切な金銭管理や投資、リスク評価を行える能力のこと)の向上は、詐欺や不正行為に巻き込まれるリスクを軽減(金融トラブルの防止)させます。

日本では、金融リテラシーに自信がない人が多いものの、世界と比べて突出して低いというわけではありません。

今後どのように金融教育を推進していくのか、注目が集まっています。
  
金融リテラシー調査(金融広報中央委員会)
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/

金融教育が進んでいる国

2022年に、 OECD(経済協力開発機構:ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関)が行った金融リテラシー調査を見てみると、調査参加国(24か国)の平均正答率は、62.7ポイント、日本は、62.5ポイントとなり24か国のうち第8位に相当しています。

ここでは、「金融」の先進国と言われる4か国の金融教育の現状を見ていきます。

アメリカ

アメリカでは、2003年に金融リテラシー教育委員会が設立され、2006年以降、金融リテラシー向上のための国家戦略を策定し、国民の金融リテラシー向上に寄与しています。

経済教育(Economic Education)とパーソナルファイナンス教育(Personal Financial Education)に大別し、ほぼすべての州が教育基準に取り入れています。

アメリカでの学校教育は各州の方針によって定められていて、金融教育に関しても同様です。

しかし、パーソナルファイナンスに関しては、金融教育に関心を持つ民間金融機関・財団・学術団体・政府機関などおよそ150の機関が共同出資して設立したNPO法人「ジャンプスタート(JumpStart)」が中心となり普及活動を進めてきました。

幼児期から高校卒業までに身につけるべきお金の知識を、教育基準(ナショナルスタンダード)としてまとめ、多くの教育現場で採用されています。

2017年(第4版)では、金融リテラシー(金融や経済に関する正しい知識や判断力)を、「支出と貯蓄」「クレジットと負債」「勤労と所得」「投資」「リスクと保険」「金融上の意思決定」の6つのカテゴリーに大別し、ゴールが明確に設定されています。

「投資」のカテゴリーでは、日本の小学4年生にあたる10歳相当で、「投資をする理由を説明する」「単利で得られる利益を計算する」「複利で得られる利益を計算する」「単利よりも複利のほうがリターンが多く、有利である理由を説明する」がゴールになり、高校卒業までに「富を築き、ファイナンシャルゴールを達成するにはどうすればよいか説明できる」ことがゴールになります。

最新版は、「収入を得る」、「支出」、「預金」、「投資」、「クレジット管理」、「リスクマネジメント」と6つのカテゴリーに大別され2021年に発表されました。

改定には、モバイル決済、暗号資産と言った、技術の革新や環境変化に伴う新しいサービスや金融の在り方についての内容も追加されています。

「収入」と「支出」の管理能力、「リスクマネジメント」や自己実現のために必要な「預金」の形成は生活の基礎・基盤であることを再認識させる構造です。

金融教育への需要の高まり、専門性が高くなっている投資や金融商品に関連する知識などを考慮し、経済・社会に対する関りを高める改訂が図られています。

イギリス

イギリスの金融は、世界的に重要であり、いくつかの面でリーダーシップを発揮しています。

ですが個人でみると、家計消費の割合は欧州で最も多く(貯蓄の割合が少ない)、「十分に貯蓄していない、もしくは全く貯蓄していない」という家庭の割合が、半数を超えているという統計もあり老後に向けた十分な貯蓄をしていないという課題がありました。

政府は、2011年にマネー・アドバイス・サービスが設立し、国民に対して金融に関する情報提供、教育支援、アドバイスを行っています。

1999年、国民の貯蓄率の向上を目的として導入されたISA(NISAは日本版ISA)は、2021年には、成人人口の約半数が保有しています。

このような背景から、老後に向けた資産形成の重要性が一層高く、金融教育が重要な政策課題と位置づけられ2014年、公立学校のカリキュラムに金融教育が導入されました。3歳から小学校を卒業するまでに、金融と経済について学びます。お金と社会構造の理解を目指すことが目標です。

金融教育は教科化されておらず、教科の一部や学校活動として位置付けられます。

小学校の教員養成用のプログラム(Learning About Money)では、4つのカテゴリーに分けています。

「お金の管理の仕方」

  • お金の働きと使い方、日々のお金の管理、予算編成を学ぶ

「批判的な思考のできる消費者になる」

  • 必要なものと、欲しいものを区別(ニーズとウォンツ)し、他人や
  • メディアの影響を受けずに正しい商品選択ができる思考を養う

「リスク管理と感情」

  • お金の貸し借りに伴うトラブルや、インターネット詐欺の対策など
  • 自分のお金を守る方法を学ぶ 

「金融が人々の生活に果たす役割」

  • チャリティー(寄付)やより広範なグローバルコミュニティや先進国と
  • 途上国の経済格差などについて考える

イギリスでの金融教育は、お金の計算や資産形成だけではなく、「社会的責任」を果たす能力を育成する場であるという考え方にあり、社会問題を解決するというよりも、むしろ将来の健全な金融行動の「基礎」にあるものとして位置付けています。

フィンランド

フィンランドは、日本とほぼ同じ面積(国土面積約33.8万km2、世界65位)(※日本:国土面積約37.8万km2、世界62位)、人口は約550万人の北欧の小国ですが、経済的にはGDPは約2,700億ドル、一人当たりGDPは約5万ドルの豊かな国です。

1995年にEUに加盟し、高い経済水準にあります。

前回(2019年)のOECD金融リテラシー調査で第1位になっています。

SDSNが発表している世界幸福度ランキング(2024年)で7年連続の首位(※日本は2023年47位、2024年51位)となったことでも有名です。

フィンランドの義務教育は7歳から18歳までの11年間の基礎学校(総合学校)での基礎教育により行われます。

基礎教育の前には1年の就学前教育があります。

(2021年からは義務教育の終了が16歳から18歳に延長されました。)

基礎教育は児童・生徒の将来のために公正・平等な機会を与え、社会的正義を実現するものとし、児童・生徒の教育を受ける権利を保障しています。

基礎教育にかかる費用は学費だけでなく、教科書や教材、給食等も無償になります。

金融リテラシーの育成は学齢期の児童・生徒を主なターゲットに取り組まれる一方で、学校教育で習得した金融リテラシーは、常に変化する社会・経済状況により陳腐化していくため、生涯学習により最新の知識に更新することが必要と意識し、①学校、②就労期、③退職後、と生涯を通じて学び続ける金融経済教育の制度の整備が進んでいます。

今後の課題としては、

  • 学校で学ばなければならない内容が増加する中での学習時間の確保が難しいこと
  • 教育成果の実現のための改革が行われているが、金融や経済は教員の苦手分野であること
  • 金融リテラシーは家庭における格差が大きく、学校だけでなく生涯にわたり金融リテラシーの向上と更新のための学び直し(リスキリング)の機会を提供する機会を作ること

などがあげられています。

シンガポール

シンガポールは、教育水準が高いことで有名です。

教育予算は国防予算に次ぐ規模で、人材育成を国家政策の重要な柱としています。

金融教育に関しては、国家戦略となるのは意外と遅く2003年でした。

少子高齢化(日本と同様、2050年には人口の33.9%が65歳以上になる予測)を背景に個人のファイナンシャルプランニングが必要不可欠と判断され、シンガポール金融管理局(MAS)及び人材開発省(MOM)を中心に国家経済教育プログラム「MoneySense」の提供が始まりました。

Money Senseは、「シンガポール国民がお金をよりよく管理し、自分自身で健全な財政上の決定を下すことができる」ことを目的に掲げています。

すべてのシンガポール国民がお金の問題をシンプルかつ直感的に理解できるように努めており、以下3点のコンセプトを掲げています。

実用的であること

日常的な金銭的判断の場面や長期的なファイナンシャルプランニングなど、全ての人の助けとなるものを用意する

偏りのない情報であること

情報の有効性を、誰もが自分で判断できるように、客観的な情報を提供する

適切な情報であること

パーソナルファイナンスに関連する最新の動向を解説し、利用者が迅速に行動できるようにする

シンガポールの一般的な進路は、義務教育に当たる初等教育(6年間)、中等教育(4~5年間)、大学準備教育(ジュニアカレッジは2年、中央学院は3年間)から大学(3~4年間)というコースと、初等・中等教育の後、専門教育(3年間)又は技能教育(1~2年間)というコースになり、基本的な金融教育は、初等教育・中等教育までに学び事になります。

今後の課題としては、

  • 金融経済教育プログラムが就労直前や引退後の金融経済教育プログラムに比べ、初等中等教育向けのプログラムが少ないこと高い教育水準の人でも大量の金融経済情報の仕分けが困難であり、金融商品詐欺などが社会問題なっていること
  • 金融教育は学校・教員にその裁量が委ねられており、担い手が受ける教員のトレーニングに金融経済教育に特化したプログラムが無いこと

などがあげられています。

日本の金融教育が遅れている理由は?

日本の金融教育は諸外国に比べて遅れていると言われています。

近年では金融教育の重要性が認識され始めています、政府は、最低限身に付けておきたいお金の知識と判断力を「金融リテラシー」として改善の動きを見せていますが、日本の金融教育が、なかなか進まない理由は、大きく分けて3つあります。

お金の話が良しとされていない

日本の文化では、謙虚さや控えめな態度が美徳とされています。

お金の話をすることは、自慢や見栄と捉えられることがあり、他人に不快感を与える可能性があるため避けられがちです。

また、江戸時代に「士農工商」と言われる身分制度があり、お金を扱う商人の地位を低くし、「お金は汚いもの」という価値観を強制していた過去があります。

金融教育を学ぶ場所がない

日本には金融教育を学ぶ場所がいくつかありますが、まだ十分に機能していないのが現状です。

  • 学校教育

2022年から高校での金融教育が必修化され、資産形成や投資について学ぶ授業が行われています12。しかし、まだ十分な教材や教員の知識が整っていないため、改善の余地があります。

  • オンラインリソース

金融庁や金融広報中央委員会が提供するオンライン教材やガイドも利用できます。

これらのリソースは、家計管理や投資の基本について学ぶのに役立ちます。

  • 金融機関のプログラム

銀行や証券会社などが提供する金融教育プログラムもあります。

例えば、日本金融投資教育協会などが、子ども向けや社会人向けの講座を開催しています。

  • 民間団体の取り組み

「キッズマネースクール」などの団体が、親子向けの金融教育講座を開催しています。

これらの講座では、子どもたちが楽しみながらお金の知識を身につけることができます。

金融教育の機会は増えてきていますが、まだまだ改善の余地があります。

もっと多くの人が金融リテラシーを高めるための教育を受けられるような、学びの場が必要です。

投資や借り入れを消極的と捉えるケースが多い

日本の家計の金融資産(2024年03月末時点)は、前年同期比で7.1%増え、2199兆円となり、5四半期連続で過去最高を更新しています。

構成比の内訳をみると、現預金:50.9%、保険・年金・定型保証:24.6%、株式等:14.2%、投資信託:5.4%となります。

家計の金融資産を現金や預貯金として保有しているケースが大半を占めて
います。

「資金循環の日米欧比較(2023)(日本銀行調査統計局)」によると、米国では、現預金:12.6%、保険・年金・定型保証:28.6%、株式等:39.4%、投資信託:11.9%株式等を始めとする金融商品の割合が5割を超えるなど、日本とほぼ正反対の構成になっています。

ヨーロッパ圏では、現預金:35.5%、保険・年金・定型保証:29.1%、株式等:21.0%、投資信託:10.1%

アメリカほどではないにしても、金融商品の占める割合が「現預金」とほぼ同じ3割となっており、海外では金融資産を株式や投資信託などの金融商品として保有するケースが多いことがわかります。

金利が高い時代なら、預貯金も立派な資産運用の方法になり得ましたが、超低金利時代と言われる現代では、ただ銀行にお金を預けていても資産はほとんど増えません。

物価上昇時に、資産が増えないということは、お金の価値が下がりますが、どうしても日本では投資商品は「リスクが高いもの」「怖いもの」というイメージが根強く残っており、積極的に投資や金融について学ぼうとする人がまだまだ少ないのが実状です。

こうした金融商品への消極性も、海外と比較した日本の金融教育の遅れや金融リテラシーが低いことの一因となっています。

ミライブの金融教育サービスの内容

現在、働く世代の多くは、金融教育を学ぶ機会がほぼ無く、社会・会社に対する『期待』が大きくなっています。
 
ミライブでは、金融教育により知識を『知る』だけではなく、『活用する』ことを意識して、金融教育のアプローチをしています。

例えば、既存の新人研修の中で、福利厚生の仕組みや給与明細の読み方を伝える場面でも、金融教育の観点からみたアプローチをすることにより、受動的な研修の場面が、『知りたい』『学びたい』の場に変わります。

将来の大きな不安ではなく、なんとなく、漠然とした不安を抱えていると感じる方が多いようです

『不安の種』が育ってしまう前に、『金融教育』という種を育んでいきます。

金融というと苦手意識を持っている方も多いのですが、社会や経済の仕組みは身近な話題であり、伝え方を工夫するだけで、誰でも比較的短い時間で、金融教育の効果を、実感することが可能です。

また、『初めての金融教育』の機会として、親子で学べる金融教育イベントを協賛しています。

東京キッズマネースクールみらいぶ校一日が心に強く残る、夢がある日を創造します。

子どもと一緒に親子でお金の勉強ができるキッズマネースクールでは、お金の大切さと親への感謝の気持ちを育むことで、マネー教育が自然とできます。

https://kids-money.com/tag/%E3%81%BF%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%B6

キッズマネースクールがテレビや雑誌で多く取り上げられています!

https://kids-money.com/media_jisseki.html

ミライブでは、金融教育のオープンイベント(無料)をたくさん開催しています。

「はじめの一歩」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

金融教育に関する環境整備が進む一方で、専門性の高い分野であることから、伝える側の能力育成や経験値、育成内容の体系化、教育を受けられる環境整備、個人の生活設計に活用できる教育方法の改善といった具体的な課題が指摘されています。

一般的に、金融リテラシーが高くなると、

  • 家計管理ができる。
  • 計画を立ててお金を準備しているので、夢や目標を実現しやすい。
  • 緊急時の備えがあるので、アクシデント(自身のケガや病気、不景気による収入減など)に強い。
  • 詐欺や多重債務などの金融トラブルにあうことが少なくなる。
  • 経済的に自立し、より良い暮らしを送ることができる。

と言われています。「お金がある=幸せ」とは一概に言えませんし、実際に感じますが、お金は無いよりあった方が自分のやりたいことは実現しやすいのでは?と思います。

皆さまはどう感じられますか。

元記事発行日:2024年8月14日、最終更新日:2024年8月23日