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転職先に確定拠出年金がない場合の対応【移管方法もご紹介】
転職先の確定拠出年金の対応について
会社員の年金制度は、国民年金、厚生年金がありますが、福利厚生制度の一環として年金の3階建て部分として、企業年金制度を導入している企業があります。
退職金と共に、企業年金制度は、リタイアメント後の生活の支えとして重要な福利厚生となります。
企業年金制度には、確定給付年金(DB)、厚生年金基金、企業型確定拠出年金(DC)の3種類があり、企業によって制度が異なります。
これまでは、終身雇用(しゅうしんこよう)という正社員雇用において古くからある慣習がありましたが、昨今、日本でも、転職=キャリアアップと考えるようになりました。
アメリカでは、転職回数はポジティブに捉えられますので、平均勤続年数が4.2年というデータがあり、労働年数を40年で計算すると約8回転職(9社経験)になります。
日本の平均勤続年数は、12.1年でアメリカの2.9倍です。同じく労働年数を40年で計算すると約2回転職(3社経験)していることになります。
日本よりも平均勤続年数が長い国はイタリアの12.2年のみで、世界的にみると平均勤続年数10年未満が多くなります。
基本的には、転職した際、今まで積み上げてきた企業年金制度は脱退して一時金で受け取るか、企業年金の通算制度(ポータビリティ制度)を使って、継続運用するかのどちらかになります。
企業型確定拠出年金(DC)は、会社が手数料などを負担して、提携している金融機関に月々の拠出金を支払い運用します。転職した場合はその会社の社員では無くなるため、転職前の確定拠出年金制度を続けることはできません。
今回は、忘れると損をしてしまう「転職時の企業型確定拠出年金(DC)の対応」をまとめておきます。
転職先に制度がある場合
転職先に確定拠出年金制度がある場合は、転職先の企業型確定拠出年金にこれまで積み立てた資金を移換することになります。転職先の会社で手続きを行うため、前職で企業型確定拠出年金(DC)に加入していたことを伝えます。
転職先に制度がない場合
転職先に確定拠出年金制度がない場合は、個人で確定拠出年金を運用することになります。
この場合の移換先は、個人型確定拠出年金(iDeCo)となります。
iDeCoの取扱いがある金融機関(証券会社や銀行)から口座開設資料を取り寄せて個人で手続きを行います。
金融機関によって取り扱う運用商品(ファンド)が異なりますので、選択肢の多い金融機関を選択する方が良いでしょう。
転職先に企業型確定拠出年金(DC)が無い場合も、確定給付年金(DB)がある場合には、確定給付企業年金制度へ移換できる場合があります。
移換の可否については、就職(転職)先企業の担当部署に確認をするようにしましょう。
また、やむをえない事由と認められる限定的な条件にあてはまる場合のみ、「脱退一時金」という制度もありますが、限られた場合(要件)のみとなります。
企業型確定拠出年金(DC)は60歳以降の経済的備えとして設けられていますので、中途退職したときも原則として60歳まで、ポータビリティを活かして資産形成を継続することが基本となっています。
脱退一時金を受取ることができるのは限られた場合です。退職(加入資格を喪失)した時期によって取扱いが異なりますのでご注意ください。
公務員になる場合
公務員になる場合は、転職先に企業型確定拠出年金制度がない場合と同様でiDeCoに加入することになります。
手続きの流れについても、転職先に確定拠出年金制度がない場合と同じです。これまでの積立資産が移換されます。
専業主婦(夫)になる場合
専業主婦(夫)になる人(配偶者の扶養に入り、国民年金の第3号被保険者に該当する人も同様です。)も、iDeCo口座を新たに開設することになります。
自営業者になる場合、無職になる場合
自営業者になる場合や無職の場合(国民年金第1号被保険者に該当する人も同様です。)になる場合も、転職先に企業型確定拠出年金制度がない場合と同様でiDeCoに加入することになります。手続きの流れについても、転職先に確定拠出年金制度がない場合と同じです。
これまでの積立資産が移換されます。
確定拠出年金の転職時の移管について
確定拠出年金(企業型:DC、個人型:iDeCo)は、それぞれの金融機関によって選べる金融商品(ファンド)が異なります。
企業型確定拠出年金(DC)に加入している人は、会社が指定した金融機関を利用することになるため、運用商品もその金融機関が取り扱っているものの中から選択ことになります。
転職先の企業型確定拠出年金に加入して資産を移換した場合も、これまでの金融機関とは取り扱い商品が変わるため、新たな選択肢の中から希望の商品を選択します。
iDeCoに資産を移管する場合も、取り扱い商品の中から、好みの商品を選んで運用を行ないましょう。
移管後の作業
移管後の大切なポイントは、以下の2点です。
①「資産配分の見直し」を検討します。
配分変更=これからの積立額(拠出金)の運用方法の変更
スイッチング=これまでの積立額(移管金)の運用方法の変更
②「追加で拠出するか」を検討します。
企業型確定拠出年金(DC)
採用している制度により、拠出限度額が異なります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
iDeCoの掛金は、最低5,000円/月から拠出を行うことができます。
上限額は、公的年金の被保険者種別やお勤め先の企業年金制度の加入状況により異なります。
これまでの積立額は移管金として、これからの積立額は拠出金として運用を開始します。
また、拠出額に関しては、企業が拠出する金額に対し、自分自身で拠出額を増やすこと(マッチング拠出を含む)が可能です。
現行制度では、原則、60歳まで下すことができないので、拠出額を追加する場合は、ライフプランの作成をして教育資金や住宅資金などに影響が出ないか確認することをお勧めします。
注意点
企業型確定拠出年金(DC)に加入していた方が、転職・退職等により、加入者の資格を喪失した場合、6ヵ月以内に、個人別管理資産を個人型確定拠出年金(iDeCo)、他の企業型確定拠出年金、確定給付企業年金又は通算企業年金(企業年金連合会が運用する年金の一つ)に移換、若しくは脱退一時金の要件を満たす場合に請求の手続きを行わなかった場合、その資産は、国民年金基金連合会(特定運営管理機関)に自動移換されます。
自動移換された場合、次のデメリットがありますので注意が必要です。
- 資産の運用がされません。
- 管理手数料を負担する必要があります。
- 自動移換中の期間は、老齢給付金の受給要件となる通算加入者等
期間に算入されないため、受給可能年齢が遅くなることがあります。
※就職(転職)・退職された方へ(iDeCo公式サイト)
https://www.ideco-koushiki.jp/retirement
まとめ
「老後資金2,000万円問題」はご記憶に新しいと感じます。
2019年6月に金融庁の金融審議会の報告書が公表され、その中で、老後は年金以外の資産として、2,000万円必要だと騒動になりました。
金融広報中央委員会の調査(2022年)によると、世帯主が60歳代の世帯における金融資産保有額は、平均1,819万円、中央値は約700万円となっています。
また、退職金の平均(大学卒勤続38年の場合)は、大企業で、約2,230万円、中小企業で約1,092万円という結果があります。
「人生100年時代」を乗り切るためには、60歳まで引き出すことのできないお金の貯め方があっても良いかもしれません。
仮に、30歳から60歳までの30年間(360ヵ月)で、2,000万円の資産を構築したいとすると、
(非課税の場合)
金利0.1%の場合、毎月54,724円の積立
金利1.0%の場合、毎月47,621円の積立
金利3.0%の場合、毎月34,235円の積立
金利5.0%の場合、毎月23,931円の積立
(課税:20.315%の場合)
金利0.1%の場合、毎月54,891円の積立
金利1.0%の場合、毎月49,045円の積立
金利3.0%の場合、毎月37,130円の積立
金利5.0%の場合、毎月27,060円の積立
とは言え、資産運用は「自己責任」となります。
ご自身の大切な資産となりますので、少なくとも、「運用の目標」「商品の特徴や運用実績の理解」「定期的な確認・見直し」という流れを意識し、「ほったらかし」は、おすすめできません。
また、「投機」と「投資」は異なります。大切な資産を、金庫や銀行にしまって置くことも大切ですが、資産を育てていく、お金に働いてもらう仕組みが必要です。
「投機」と「投資」の違いもご理解ください。
投資とは、中長期的に資産を運用していくことです。
主な利益は、保有資産の売買差益であるキャピタルゲインと、資産を保有することで得られるインカムゲインです。(株式の配当や投資信託の分配金はインカムゲインになります。)
時間を掛け、資産を育てていくことが特徴です。
投機とは、短期的に利益獲得を目指すことを言います。
資産の短期的な価格変動を予測し、短期売買によって利益を狙います。
資産の価値よりも、短期間の価格変動に着目した取引が投機の特徴です。
ご自身の大切なセカンドライフ資金の準備を「運任せ」にしないようにご注意ください。
※確定拠出年金の拠出限度額(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/taishousha.html
元記事発行日:2024年8月27日、最終更新日:2024年8月23日