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退職金と退職金共済の違い!それぞれの特徴や得なほうを解説

退職金は、従業員が長年勤めた企業から受け取る重要な資金です。

退職金の準備方法には大きく分けて、企業が独自に設ける「退職金制度」と、共済を活用する「退職金共済」があります。

どちらも従業員の老後資金として重要ですが、仕組みやメリットに違いがあります。

特に中小企業では、「どちらを選べばよいのか」「退職金共済は本当にお得なのか」などの疑問を持つ経営者も多いでしょう。

  • 退職金制度と退職金共済のどちらを導入するのがよいのか?
  • 退職金共済は本当にお得なのか?
  • 退職金制度の資金管理は大変なのか?

といった疑問があるのではないでしょうか。

そこで本記事では、退職金制度と退職金共済の違いを詳しく解説し、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較してご説明致します。

「自社に合った退職金制度を選びたい」「退職金共済を活用するべきか知りたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

退職金制度と退職金共済の違い

退職金を支給する方法には、大きく分けて企業独自の退職金制度退職金共済の2種類があります。それぞれの特徴を簡単にまとめると、以下のようになります。

項目退職金制度退職金共済
運営主体企業共済団体(国・業界団体など)
資金管理企業が内部留保または外部積立共済団体が管理
掛金の設定企業が自由に決められる一定の掛金を拠出
税制優遇一部あり掛金全額損金算入可能
運用リスク企業が負う共済団体が負う
主な対象大企業・中小企業中小企業向けが多い

企業独自の退職金制度は、柔軟に設計できる一方で、資金の管理や運用リスクを企業が負担する必要があります。

一方、退職金共済は、国や業界団体が運営しており、企業が一定の掛金を支払うことで、従業員の退職時に共済団体から退職金が支給される仕組みです。

掛金を全額損金算入できるため、節税効果が高いのも大きな特徴です。

退職金制度の特徴

企業独自の退職金制度は、企業が自由に設計・運営する制度です。主な特徴は以下の通りです。

1. 企業が自由に制度設計できる

退職金の金額や計算方法、支給要件などを企業ごとにカスタマイズ可能です。

たとえば、

  • 勤続年数×基本給の〇ヶ月分
  • 定年時の給与×〇%
  • 退職理由(定年・自己都合・会社都合)による金額の違い

といったルールを独自に決められます。

2. 社内で資金管理・運用が必要

退職金制度では、企業が資金を確保し、運用する必要があります。これは大きな負担になることもあります。

特に中小企業では、長期的な資金確保が難しく、退職金の支払いが経営を圧迫するリスクも考えられます。

3. 運用次第で支給額が変わる

企業が外部の金融商品(確定給付企業年金や確定拠出年金)を活用することもできます。

うまく運用できれば、より多くの退職金を支給できますが、逆に運用が失敗すると企業の負担が増えることになります。

退職金共済の特徴

退職金共済は、国や業界団体が運営する制度で、企業が掛金を積み立てることで、従業員の退職時に退職金を支給する仕組みです。

1. 掛金の全額が損金算入可能

退職金共済の最大のメリットは、企業が支払う掛金の全額を損金(経費)にできることです。

たとえば、月額3万円の掛金を10年間積み立てた場合、企業側の節税効果は以下のようになります。

  • 掛金合計:360万円(3万円×12ヶ月×10年)
  • 法人税率30%の場合:節税額108万円(360万円×30%)

このように、退職金共済を利用することで、法人税の負担を軽減できるのです。

2. 共済団体が資金管理を行うため、企業の負担が少ない

企業が直接資金管理をする必要がないため、資金流用のリスクがなく、運用の手間がかかりません。

3. 退職時に共済団体から直接支給される

企業が退職金を支払うのではなく、共済団体が退職者に直接退職金を支給する仕組みです。

退職金共済の種類

それでは退職金共済にはどのような種類があるのか、代表的なものを見ていきましょう。

中小企業退職金共済

中退共とは?

中小企業退職金共済(中退共)は、独立行政法人 勤労者退職金共済機構が運営する国の公的な退職金制度です。中小企業が退職金制度を導入しやすくするために国が支援しているのが特徴です。

対象企業

中小企業退職金共済に加入できるのは、以下の条件を満たす中小企業です。

業種従業員数の条件資本金の条件
製造業、建設業、運輸業300人以下3億円以下
卸売業100人以下1億円以下
小売業、飲食業50人以下5,000万円以下
サービス業100人以下5,000万円以下

※上記条件のどちらか一方を満たせば中退共に加入可能

掛金と企業負担

  • 掛金は企業が負担(従業員は負担なし)
  • 5,000円〜30,000円の範囲で自由に設定可能(1000円刻みで変更可)
  • 短時間労働者は上記の掛金月額の他に2,000円〜4,000円でも設定可能(1000円刻みで変更可)
  • 掛金は全額損金算入できるため、法人税の負担を減らせる

国の助成制度

中退共では、新しく加入した企業に対して、国が掛金の一部を助成する制度があります。

  • 加入後4ヶ月目から掛金の½(上限5,000円)を1年間国が助成
  • 短時間労働者の特例掛金(掛金月額4,000円以下)加入者については、さらに次の額を上乗せして助成します。掛金月額2,000円の場合は300円、3,000円の場合は400円、4,000円の場合は500円

助成を受けることで、企業の負担を軽減しながら退職金を準備できる仕組みになっています。

退職金の支給

従業員が退職した際は、企業を通さずに、中退共から従業員に直接退職金が支給されます。そのため、企業が一時的に大きな退職金を負担する必要がなく、資金繰りの負担を軽減できます。

メリット
✔ 掛金は全額損金算入でき、節税効果が高い
✔ 企業の負担が少なく、手間なく退職金を準備できる
✔ 退職時に企業が大きな資金を用意する必要がない

デメリット
✖ 掛金の変更が可能だが、自由度は限られる
✖ 退職金額が決まっているため、独自のルールを設けにくい

特定退職金共済

特定退職金共済とは?

特定退職金共済は、商工会議所や業界団体が独自に運営する退職金共済制度です。中退共と異なり、各団体が独自のルールで制度を設計しているのが特徴です。

対象企業

加入できるのは、その共済を運営する団体に加盟している企業です。

たとえば、以下のような共済があります。

  • 商工会議所の共済制度(各地域の商工会議所が運営)
  • 業界団体(飲食業、製造業、サービス業など)の共済制度

例えば、「◯◯商工会議所の退職金共済制度」や「△△業界退職金共済」などがあり、それぞれの団体が運営を行っています。

掛金の設定

  • 各団体が独自に設定(5,000円~30,000円の範囲が一般的)
  • 掛金は企業が負担
  • 損金算入が可能(税制優遇あり)

メリット
✔ 各業界や地域のニーズに合わせた制度が利用できる
✔ 掛金の損金算入が可能で、節税効果がある
✔ 退職金制度を自社で管理する負担が少ない

デメリット
✖ 各団体ごとに制度が異なり、自由度が低い
✖ 企業が属する業界や地域によっては加入できないこともある

特定業種退職金共済

特定業種退職金共済とは?

特定業種退職金共済は、特定の業種(建設業・医療業・運送業など)に特化した退職金共済制度です。

各業界の特性を考慮して設計されており、その業界で働く従業員のための退職金を準備することができます。

代表的な特定業種退職金共済

特定業種退職金共済の代表例として、以下のような制度があります。

  1. 建設業退職金共済(建退共)
    • 対象:建設業の事業者(特に職人・技能労働者)
    • 特徴:国が助成し、掛金の一部を補助
    • 掛金は日額単位(例:1日あたり310円など)
    • 建設業の労働者は短期雇用が多いため、業界に適した設計
  2. 医療業退職金共済
    • 対象:医療法人・クリニックなど
    • 特徴:医療業界に特化した退職金積立制度
  3. 運送業退職金共済
    • 対象:トラック運送業、バス業界など
    • 特徴:ドライバーの長期雇用を支援するための退職金制度

特定業種退職金共済の仕組み

各業界団体が運営し、業界の実情に合わせて掛金や退職金の計算方法を設定しています。

メリット
✔ 特定の業界の労働環境に合わせた制度設計がされている
✔ 掛金の損金算入が可能で、節税できる
✔ 国や業界団体の助成を受けられることが多い

デメリット
✖ 対象業種以外の企業は加入できない
✖ 掛金の変更がしにくい

退職金共済のメリット・デメリット

退職金共済は、中小企業が手間をかけずに退職金を準備できる制度ですが、メリット・デメリットをしっかり理解しておくことが重要です。

以下で、それぞれ詳しく説明します。

メリット

✅ 1. 節税効果が高い(掛金が全額損金算入可能)

退職金共済の最大のメリットは、企業が支払う掛金を全額損金算入できることです。

通常、企業が退職金を支払うために内部留保している資金は、税引後の利益から積み立てる必要があります。しかし、退職金共済を利用すれば、掛金を全額「経費」として計上できるため、法人税の負担を軽減できます。

企業の税負担を抑えながら退職金を積み立てることができます。

✅ 2. 企業の資金管理の負担が少ない

企業が独自の退職金制度を運営する場合、資金管理が必要になります。適切に資金を確保しておかないと、退職金の支払い時に大きな負担が発生することになります。

例えば、複数の従業員が同じタイミングで退職すると、企業は一度に多額の退職金を支払わなければなりません。特に中小企業では、突然の退職金支払いが資金繰りを圧迫するリスクがあります。

退職金共済を利用すれば、共済団体が資金を管理・運用するため、企業は毎月決められた掛金を支払うだけで済みます。退職時には共済団体から従業員に直接退職金が支給されるため、企業の資金負担が軽減されます。

✅ 3. 従業員の福利厚生として魅力的

退職金制度は、従業員にとって重要な福利厚生の一つです。特に中小企業では、退職金制度がない場合も多いため、退職金共済を導入することで、従業員の安心感を高め、離職率を低下させる効果が期待できます。

さらに、退職金共済を導入していることを求人情報に記載すれば、求職者に対するアピールポイントにもなります。

例えば、
「当社は中退共に加入しており、安定した退職金制度があります!」
といった説明ができれば、求職者にとっても魅力的な職場に映るでしょう。

デメリット

❌ 1. 解約時に元本割れのリスクがある

退職金共済は、原則として長期間積み立てて退職金として支給されることを目的とした制度です。そのため、途中で解約すると元本割れする可能性がある点には注意が必要です。

例えば、加入後数年で退職金共済を解約すると、払い込んだ掛金の全額を受け取ることができず、一部が減額されることがあります。

【元本割れのリスクが高まるケース】

  • 加入後すぐに解約した場合 → 解約手数料などが差し引かれるため、元本割れする可能性大
  • 経営状況が悪化し、掛金を払い続けられなくなった場合 → 一定期間支払いを停止すると、解約を余儀なくされることがある

💡 対策としては?
企業の財務状況をしっかり見極め、無理のない掛金設定を行うことが重要です。

❌ 2. 掛金の柔軟な変更が難しい

退職金共済の掛金は、基本的に契約時に設定し、後から大幅に変更することが難しい仕組みになっています。

例えば、
退職金制度を充実させたいので掛金を増やしたい
業績が悪化したので掛金を減らしたい

と考えたときに、柔軟に変更できない場合があります。

特に中退共の場合、掛金の変更は可能ですが、頻繁に増減させることはできません。

💡 対策としては?

  • 最初から適切な掛金設定を行うことが重要
  • 企業の成長に合わせて段階的に掛金を増額するプランを検討する

❌ 3. 企業独自のルールを設けにくい

退職金共済は、国や共済団体が運営しているため、企業独自のルールを追加することが難しいというデメリットがあります。

例えば、企業が独自の退職金制度を設ける場合、
勤続年数ごとに退職金額を増やす
役職に応じて退職金を調整する
退職理由(定年・自己都合・会社都合)によって支給額を変更する

といったカスタマイズが可能ですが、退職金共済ではこのような調整が難しく、共済団体のルールに従う必要があります。

💡 対策としては?

  • 退職金共済を利用しつつ、独自の上乗せ退職金制度を併用する(企業独自の退職金を追加する)
  • 従業員の職種や役職によって、異なる共済制度を活用する

退職金制度と退職金共済はどっちを選ぶべき?

ここまで、退職金制度と退職金共済の特徴や仕組み、それぞれのメリット・デメリットを見てきましたが、どちらを選ぶべきかは企業の規模や経営方針、資金管理の考え方によって異なります。

最後にどちらを選ぶべきかの判断ポイントについてまとめておきましょう

✅ 自社で管理し、自由に設計したいなら → 退職金制度

退職金制度は、企業が独自に設計・管理する制度のため、従業員の職種や役職、勤続年数に応じた細かなルールを設定できるのが最大のメリットです。

退職金制度を選ぶべき企業の特徴

退職金の支給ルールを柔軟に設定したい
退職金の原資を社内で運用し、増やすことを検討している
従業員の職種・勤続年数・退職理由によって退職金を調整したい
社内に資金管理の余裕があり、長期的に積み立てが可能

退職金制度を導入する場合のポイント

1. 退職金の計算方法を自由に決められる
退職金制度では、従業員の勤続年数や給与額に応じて支給額を細かく設定できます。例えば、

  • 勤続10年未満:退職金なし
  • 勤続10年以上20年未満:基本給の〇ヶ月分
  • 勤続20年以上:基本給の〇ヶ月分+役職手当

このように、企業の経営方針に沿った退職金制度を設計できるため、柔軟な対応が可能です。

2. 退職理由に応じた支給額の変更が可能
退職金制度を導入すれば、自己都合退職・会社都合退職・定年退職などの理由によって、退職金の支給額を調整できます。

例えば、

  • 定年退職の場合:退職金を満額支給
  • 自己都合退職の場合:支給額を50%減額
  • 会社都合退職の場合:満額+α(特別退職金)を支給

このように、企業独自のルールを設定できるため、退職者の状況に応じた柔軟な対応が可能です。

3. 企業が運用することで、資産を増やせる可能性がある
退職金制度では、企業が外部の退職金積立制度(確定給付企業年金や確定拠出年金)を活用して、退職金の原資を運用することも可能です。うまく運用すれば、企業の負担を抑えながら、より多くの退職金を準備できます。

💡 退職金制度のデメリットは?

  • 企業の財務状況によって、退職金の支払いが困難になることがある
  • 管理が必要で、退職時の資金繰りの負担が発生する可能性がある

✅ 手間をかけずに確実に準備したいなら → 退職金共済

退職金共済は、企業が一定の掛金を積み立てるだけで、従業員の退職時に共済団体から退職金が直接支給される仕組みです。企業側の負担が少なく、長期的に安定した退職金準備ができるため、特に中小企業に向いています。

退職金共済を選ぶべき企業の特徴

手間をかけずに退職金を準備したい
税制優遇を最大限に活用し、法人税を抑えたい
退職金の資金管理を外部に任せたい
中小企業で独自の退職金制度を設けるのが難しい

退職金共済を導入する場合のポイント

1. 掛金は全額損金算入できるため、節税効果が高い
退職金共済の最大のメリットは、掛金を全額損金算入できることです。

退職金を積み立てながら法人税を削減できるため、税負担を軽減しつつ退職金を準備できるのが大きなメリットです。

2. 企業の資金負担が軽減される
退職金共済では、掛金を毎月積み立てるだけで、従業員が退職した際には共済団体から直接退職金が支給されます。

そのため、企業が退職金の支払いのために急に資金を用意する必要がない点が魅力です。

3. 退職金の運用リスクを企業が負わなくて済む
退職金制度では、企業が資金を運用するため、場合によっては損失を被るリスクもあります。

しかし、退職金共済では、共済団体が資金を管理・運用するため、企業側にリスクはありません。

💡 退職金共済のデメリットは?

  • 一度加入すると、掛金の変更が難しい(特に減額が難しい)
  • 解約すると元本割れのリスクがある
  • 企業独自のルールを設定できないため、柔軟性に欠ける

🔹 退職金制度が向いている企業

企業独自の退職金ルールを設計したい
役職や退職理由に応じた細かな支給ルールを作りたい
長期的に資金管理が可能で、運用にも挑戦したい
従業員数が多く、柔軟な退職金制度が必要

💡 「自社で自由に退職金制度を設計したい企業」向け!

🔹 退職金共済が向いている企業

資金管理の負担を減らしたい
税制優遇を活用して、節税しながら退職金を積み立てたい
毎月の一定額を掛金として拠出し、計画的に準備したい
中小企業で、独自の退職金制度を運営するのが難しい

💡 「手間をかけずに確実に退職金を準備したい企業」向け!

退職金制度と退職金共済は、それぞれメリット・デメリットがあります。

企業の規模・財務状況・運用方針に応じて適切な制度を選択することが大切です。

また、両方を併用することも可能なので、企業の状況に応じた最適な方法を選びましょう!

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退職金制度や退職金共済の選択は、企業の将来に大きく関わる重要な決定です。

適切な制度を選ぶことで、従業員の満足度向上と企業の財務健全性の両立を目指していきましょう。

退職金の仕組みを見直したい方や、新しく導入を検討している方は、ぜひミライブにご相談ください!

元記事発行日:2025年2月25日、最終更新日:2025年3月10日