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人的資本経営の5つのメリット!導入する流れも徹底解説
人的資本経営とは?
人的資本経営では、企業や組織が従業員の能力やスキル、経験を「資本」として考え、それを最大限に活用することで企業の競争力を高める考え方です。
簡単に言えば、「人材を人財として考える」「ヒトを大切にする経営」ということになります。
人的資本とは「人材の価値」を指します。例えば、優れた技術を持つエンジニアや、マーケティングに精通した営業マンなど、彼らのスキルや知識は企業にとって非常に貴重な資産です。
これを単なる「コスト」として見るのではなく、更に、投資することで大きなリターンが得られる「資本」として考え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を人的資本経営と定義しています。
人的資本経営とは(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html
これから社会にでる学生の方でもイメージしやすいように、部活動で考えてみましょう。
例えば、サッカー部で優れた選手がいれば、その選手がいることでチーム全体の成績が上がります。
しかし、持続的に成長できるかどうかは、その後の環境に左右されてしまいます。
監督やコーチがその選手の能力を見極めて、適切なポジションで活躍させたり、トレーニングの機会を提供したりすることで、その選手はもっと成長し、チームに大きく貢献できるようになります。これが、企業や組織では人的資本経営にあたります。
企業や組織は従業員の能力を引き出すために、教育や研修、キャリア開発の機会を提供することが大切になります。
また、働きやすい環境を整えることで、従業員が最大限の力を発揮できるようなサポートも欠かすことはできません。
従業員のモチベーションが上がり、企業の継続的な成長に寄与します。
人的資本経営の5つのメリット
国家の施策や情報開示などの必要性を踏まえると、人的資本経営の実現は社会的な要請という側面もあります。
しかし、人的資本経営の考え方を取り入れ、実践することは目に見える形で、多くのプラス効果を享受することが出来ます。
ここでは、具体的なメリットを5つに分けてご紹介します。
【1.従業員のスキルを可視化できる。】
人的資本経営では、従業員のスキルや能力をデジタル化してデータベースに蓄積することが可能です。
このデータベースを活用することで、企業は各従業員のスキルセットを簡単に把握することができます。
例えば、新しいプロジェクトが始まるときに、そのプロジェクトに最適なスキルを持つ従業員を素早く見つけることができます。
また、従業員自身も自分のスキルを客観的に評価できるため、成長目標を明確に設定する事ができます。
【2.従業員エンゲージメントが向上する。】
従業員エンゲージメントとは、従業員が仕事に対して感じる熱意や責任感のことです。
人的資本経営においては、企業が従業員の成長やキャリア開発に積極的に投資することで、従業員は自分が大切にされていると感じます。
例えば、研修や教育プログラム、メンタリングなど場を通じて自己成長の機会を提供することで、従業員は仕事に対する意欲が高まり、やりがい、企業や組織への忠誠心も増します。
【3.生産性が向上する。】
従業員のスキルアップや適材適所の配置によって、生産性が大幅に向上します。
例えば、特定の業務に対するスキルを持つ従業員をその業務に専念させることで、業務が効率化されます。
また、継続的なトレーニングや
フィードバックを通じて、従業員の能力を最大限に引き出すことができます。
企業全体の生産性も向上し持続的な成長が可能になります。
【4.企業価値が高まる。】
従業員が持つスキルや知識は、企業の競争力を直接的に向上させます。
例えば、最新の技術や市場動向に詳しい従業員がいれば、新しいビジネスチャンスを見逃さずに捉えることができます。
また、企業が従業員の成長に注力することで、新たな優れた人材を引きつけることができ、結果として
企業のブランド力や市場での評価が向上します。
【5.新たな投資も集められる。】
人的資本に投資している企業や組織は、サステナビリティ、つまり、長期的に持続可能な成長が期待できるため、ステークホルダー(利害関係者)からも高く評価されます。
投資家は、リスクが低く、安定した収益を見込める企業に投資をしたいと考えるため、人的資本経営に力を入れている企業は魅力的な投資先と見なされます。
例えば、従業員の離職率が低く、高いエンゲージメントを維持している企業は、経済的な安定性と成長のポテンシャルが高いと評価されるという事になります。
人的資本経営の基本フレームワーク
人的資本経営は幅広い概念で、絶対的な解答はありません。
そのため具体的な実践方法は、企業の規模や置かれている環境、目指すべき経営目的によっても
異なります。
しかし適切に成果をあげるためには、方向性を理解しておくことは重要です。
基本フレームワークは以下のように5つに大別できます。
1.人材の探求と評価
スキルや知識を評価し、適切な役割に配置すること。
2.教育とトレーニング
スキル向上のための教育プログラムやトレーニングを提供すること。
3.キャリア開発
キャリアパスを明確にし、成長の機会を提供すること。
4.評価とフィードバック
継続的なパフォーマンス向上のため、定期的な評価とフィードバックを提供すること。
5.モチベーションとインセンティブ
モチベーションを高めるため、インセンティブや報酬制度を導入すること。
経済産業省が公表している報告書に、『人材版伊藤レポート』があります。
人的資本経営を実現するためのフレームワークとして、「3P・5Fモデル」という理論モデルが紹介されています。
「当たり前のように実践されていると思っていたことが、実はそうではなった!」
「不都合な現実が次々に浮かび上がってきた・・。」
責任者たちが、自己反省と悶絶を始めたと言われる内容を確認していきます。
3Pモデル
3PのPとは、「Perspectives」(視点)のことであり、人材戦略を立てるうえでどのようなポイントを踏まえるべきかという意味を表しています。
【1.経営戦略と人材戦略の連動】
こ企業のビジョンや長期的な目標に基づいて人材戦略を設定することを意味します。
例えば、ある企業が技術革新を目指している場合、その目標に合わせて技術的なスキルを持つ人材を育成・採用し、適切な部署に配置します。
具体的な例としては、IT企業がAIやデータサイエンスに精通した人材を育成するプログラムを導入することが挙げられます。
【2.Asis-Tobeギャップの定量把握】
現在の状態(Asis)と、目指すべき理想の状態(Tobe)の間に存在するギャップを数値で把握し、そのギャップを埋めるための施策を具体的に計画します。
例えば、従業員の現在のスキルレベルと必要なスキルレベルを比較し、必要な研修や教育プログラムを導入します。
ある製造業の企業が、新しい生産技術を導入するために従業員の再教育を実施することが考えられます。
【3.企業文化への定着】
人的資本経営の取り組みを企業文化として浸透させることが重要です。
これにより、全社員が共通の価値観や目標に向かって協力し合う環境を作り出します。
例えば、Google社では「社員の成長を促進する文化」を重視し、全社員が自己啓発やスキルアップを継続的に行うことを奨励しています。
5Fモデル
5FモデルのFとは、いかなる業種の企業でも共通して取り組むべきとされている人材戦略の要素(Factor)を示しています。
【1.動的な人材ポートフォリオ】
企業内の人材を適材適所に柔軟に配置し、変化するビジネス環境に迅速に対応できる組織を構築します。
例えば、大手企業がプロジェクトごとにチームを組み替え、必要なスキルセットを持つ人材を集めて新しいプロジェクトに取り組むことなどが考えられます。
【2.知・経験のダイバーシティ&インクルージョン】
多様なバックグラウンドや経験を持つ人材を採用・活用することで、イノベーションや創造性を促進します。
例えば、ある企業が異なる国籍や文化を持つ従業員を積極的に採用し、チームの中で様々な視点からのアイデアを取り入れることなどが考えられます。
【3.リスキリング・学び直し】
従業員が新しいスキルや知識を習得できるよう、継続的な学習の機会を提供します。
例えば、ある企業がデジタルトランスフォーメーションに対応するため、従業員にオンライン講座やワークショップを提供してスキルアップを図ることなどが挙げられます。
【4.従業員エンゲージメント】
従業員が企業に対して高いモチベーションと情熱を持つようにする取り組みです。
企業は従業員の意見やアイデアを尊重し、働きがいのある環境を提供します。
例えば、ある企業が従業員満足度調査を定期的に実施し、その結果を元に改善策を講じることが考えられます。
【5.時間や場所にとらわれない働き方】
テレワークやフレックスタイムなどの柔軟な働き方を推進することで、従業員が自分のライフスタイルに合わせて働ける環境を整えます。
これにより、ワークライフバランスが向上し、生産性も高まります。
例えば、リモートワークを導入している企業が、従業員のパフォーマンスを向上させるために柔軟な勤務時間を導入することが挙げられます。
人的資本経営を導入する流れ
人的資本経営を導入するには具体的にどうすればよいのか、気になる方も多いでしょう。
実際に人的資本経営を導入する流れを、これから社会にでる学生の方でもわかりやすいようにまとめてみました。
1.目標設定
まず最初に、企業や組織では目標を明確に設定します。これには、「どのようなスキルや能力を持つ人材が必要なのか」を具体的に決めることが含まれます。
例えば、「AI技術を活用して新しい製品を開発したい。」と考えたとします。
2.現状分析
次に、企業は現在の従業員のスキルや能力を評価し、データとして収集します。
これにより、目標達成に必要なスキルと現状のスキルのギャップを把握します。
例えば、「従業員の中にAI技術に詳しい人がどれだけいるのか。」を確認します。
スキルギャップ分析、エンゲージメント調査、パフォーマンス評価の結果を用いて、従業員の現状を詳細に把握することが可能です。
3.教育・研修プログラムの設計と実施
現状と期待される状況のギャップが明確になったら、そのギャップを埋めるための教育や研修プログラムを設計し、実施します。
例えば、「AI技術に関する研修を社内で行う。」「リーダーシップ研修を実施し、次世代の管理職を育成する。」など、具体的な戦略を立てます。
4.キャリアパスと成長の支援
従業員が自分のキャリアパスを明確にし、成長できるように支援します。
これには、「メンター制度」や「コーチングの導入」などが含まれます。
例えば、「優れたエンジニアが若手社員のメンターとなり、スキル向上をサポート」など、具体的なアクションを実行します。
5.パフォーマンス評価とフィードバック
従業員のパフォーマンスを定期的に評価し、フィードバックを提供します。
これにより、従業員は自分の強みや改善点を把握し、さらに成長するための具体的なアクションを取ることができます。
例えば、「定期的に、1on1などのフィードバックの場を作る。」「毎年1回の評価面談を実施し、個々の目標達成状況を確認する。」「エンゲージメント調査の実施」など、進捗を確認します。
6.報酬とインセンティブの提供
成果に応じた報酬やインセンティブを提供し、従業員のモチベーションを高めます。
これは、ボーナスや昇給だけでなく、特別なプロジェクトへの参加機会なども含まれます。
例えば、「AIプロジェクトに貢献した従業員には、追加のボーナスを支給する。」と「スキルの習得によって、新しいプロジェクトに参加できる。」など、モチベーションアップは、報酬だけではありません。
7.働きやすい環境の整備
従業員が働きやすい環境を整えることも重要です。
これには、柔軟な勤務時間やリモートワークの導入が含まれます。
例えば、「プロジェクトの特性に応じてリモートワークを導入し、従業員が自分にあったスタイルで働けるようにする。」「フレックス制度を導入し、ライフスタイルや家庭の状況に合わせた勤務時間で働けるようにする。」など、生活スタイルや地理的に制限のあった人材の採用が可能になります。
具体的な事例としては、Google社を見ていきます。
Google社は人的資本経営を効果的に実践している企業の一つです。
従業員の成長とキャリア開発を重視し、多くのトレーニングプログラムや学びの場、キャリア支援などを提供しています。
また、柔軟な働き方を推進し、従業員が最適な環境で最大限のパフォーマンスを発揮できるようにしています。
Google社の文化は、「モラルの高い人材を引き付け、その人材を育てること」に重点を置いています。
これにより、常に優れた人材を引きつけ、イノベーションを推進しています。
まとめ
人的資本経営は、中長期的な企業価値向上や持続的成長に不可欠な経営手法として注目されています。
日本国内でもその重要性が認識され、経済産業省から公表されたレポートを契機に、多くの企業が具体的な取り組みを始めています。
人的資本経営は単なる流行りの言葉ではなく、企業の持続的発展にとって本質的な価値を持つ取り組みです。
ここまで読んで頂いた読者の皆さまは、「当たり前で既に取り入れていることがたくさんある。」と感じて頂いた方が多いのではないでしょうか。
もしも、「もう少し成果となって表れて欲しいのに・・。」と感じるとしたら、「視点」を変えてみることも良いかもしれません。重要性を理解し、企業の現状や将来像と照らし合わせながら、独自の戦略を築くことが求められます。
そして、従業員の「やる気」(スキルアップやエンゲージメント)の向上を通じて、企業全体の競争力を高めることが大切です。人的資本経営の導入、考え方を取り入れ、変化するビジネス環境に柔軟に対応しながら、さらなる企業価値の向上を目指していきましょう。
元記事発行日:2024年11月22日、最終更新日:2024年12月3日